シンガポールで歯医者に行くと高い?実は“自費だからこそ”受けられるメリットも
- Miyako Beppu
- 1 時間前
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シンガポールで暮らしていると、「シンガポールで歯医者に行くと高いから日本に帰ったときに治そうかな…」と考える方も多いのではないでしょうか。確かに、シンガポールの歯科治療は自費ベースになるため高額に感じられます。
でも実は、その「自費だからこそ」シンガポールでは、日本ではアクセスしづらい専門医からより高度な治療や予防ケアを受けやすい といった大きなメリットがあります。歯はもちろんのこと、体全体の健康のことを考えると、むしろ安心できる選択になることも。
今回は、Lee & Lee Dental で診療にあたる伊藤 順子先生に、シンガポール在住の日本人が知っておきたい歯科治療のポイントを伺いました。

日本とシンガポールの歯科制度の違い
両国の一番の違いは「保険治療が一般的か、自費治療が一般的か」。
日本:健康保険があるため、虫歯や歯周病の治療は安価に受けられる。その一方で、保険の枠に沿った治療が中心で、専門的な治療にアクセスするには大学病院などに限られるケースが多い。
シンガポール:保険がなく自費治療が基本。その分、専門医に直接アクセスできる環境が整っており、高度な治療を選びやすい。
また、診療スタイルも異なります。日本では歯科医と歯科衛生士が分業しますが、シンガポールでは一人の医師が検診から治療まで一貫して対応。話す機会も多くなるため、自ずと生活習慣も含めて診てもらえる安心感があります。
高額でも高度な治療を受けた方がよいケース

たとえ高額であったとしても、専門医からしっかり高度な治療を受けた方がよいケースがあります。その代表例が 根管治療(歯の神経治療) です。
根管治療は、高度な技術が求められる難しい治療で、対応できる歯科医は多くありません。中途半端に終わると、強い痛みが残ったり再発したりするリスクも高いのが特徴です。
「一時帰国のときに治療すればいい」と考える方もいますが、根管治療は通常複数回の通院が必要です。そのため短期間の帰国では治療が終わらず、結果として「痛みを抱えたまま帰国」「途中で再発」「結局シンガポールでやり直し」となり、時間も費用も余計にかかってしまうことがあります。
シンガポールには専門医が多く、症例数も豊富。予約も取りやすいため、計画的に治療を完結できるのは大きなメリットです。
「根管治療は難易度が高く、再発リスクもあるため、専門医に任せる方が安心です。日本では専門医を探すのが難しかったり、見つけても予約待ちになったりすることが多いですが、シンガポールなら専門医が豊富なので、しっかり治療を進められます」(伊藤先生)
自費だからこそ受けやすい効果的なクリーニング

自費治療が浸透しているシンガポールだからこそ受けておきたいのが 歯のクリーニング です。
「クリーニング=歯のお掃除にそこまでお金をかけるのはちょっと…」と思う方もいるかもしれません。
しかしシンガポールのクリーニングでは、歯の表面をきれいにするだけでなく、歯周病菌を減らす=菌をコントロールすることに重点を置き、“エアフロー”が広く導入されています。
歯周病菌は、口臭や歯ぐきの腫れ・出血といった 口内トラブル を引き起こすだけでなく、血液を介して全身を巡り、心臓病・糖尿病・大腸がん などのリスクにも関わることが分かっています。だからこそ、歯周病菌を少なくしておくことが健康維持に欠かせないのです。
ところが歯周病菌は歯の表面に バイオフィルム(強力な膜) を形成しており、歯ブラシや通常のクリーニングでは壊せません。唯一、これを徹底的に除去できる方法として認められているのが エアフロー。微細なパウダーを水と空気で吹き付けることで、バイオフィルムを効率的に取り除きます。シンガポールでは通常のクリーニングの一環としてエアフローを受けられるのが大きな特徴です。
「歯や体の健康を守るには、歯周病菌をコントロールすることが欠かせません。エアフローはそのために最も効果的な方法です。年4回受けたとしても、病気になったときの医療費を考えればむしろ経済的。健康維持のための必要経費だと思って続けてほしいですね」(伊藤先生)
日本で受けた方が良い治療もアリ
伊藤先生によれば、シンガポールに滞在する期間によっては、日本で受けた方がよい治療もあります。代表的なのが矯正とインプラントです。
「矯正は2〜3年かかり、在星中に完了できる見込みがない場合、日本で途中から矯正を引き継ぐ歯科医を探すのは難しいです。そのため、日本で始めるのが無難です。ただし、日本で開始した矯正をシンガポールで継続するのは比較的スムーズですよ」(伊藤先生)
「インプラントは治療に半年ほどかかります。半年間現地に滞在する見込みがなければ、日本で受けた方が良いと思います」(伊藤先生)
シンガポール生活ならではの歯の注意点とケア
伊藤先生に、日常生活の中で気をつけたいポイントやケアの工夫についても伺いました。

骨付き料理に注意:バクテーやチキンライスの骨など、硬い異物で歯が欠けるトラブルも。
子どもの予防ケアのポイント:歯ブラシに加えてフロスを習慣に。おやつは時間を決め、ジュースや飴など口に長く残るものは控えると虫歯予防に◎。(食べ物が口の中にあると酸が分泌され、虫歯の元となるため)
水道水のフッ素も味方に:シンガポールの水道水にはフッ素が含まれており、妊婦さんや子どもが飲むと虫歯予防に効果的です。
まとめ
シンガポールの歯科治療は高額に思えるかもしれませんが、その分、専門治療と全身の健康につながる予防ケアを受けやすい環境が整っています。異国で暮らす上で、安心できる医療体制があるのは大きな支えになりますよね。
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伊藤 順子先生(Dr. Junko Ito)プロフィール

東北大学歯学部卒業後、青森県立中央病院 歯科口腔外科に入局。一般治療に加え、麻酔科研修や全身疾患を持つ患者への歯科治療に従事したのち、東京の歯科クリニックで一般治療から審美歯科、矯正治療まで幅広く経験。2012年よりシンガポールに移住し、日本人患者の歯の健康を支えている。
「今ある歯をなるべく抜かず、削らずに守る」ことを基本方針とし、痛みに配慮した治療と予防ケアを重視している。
Lee & Lee DentalのHP: https://www.leeandleedental.com/
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